運転資金の種類
事業に欠かせないものといえば「運転資金」です。運転資金がなければ、事業を成功させることができません。そのため、運転資金を用意するために融資を受けることもあります。
しかし、運転資金にはいくつかの種類があり、融資を受けるためにそれぞれの種類について理解する必要があります。そこで今回は、運転資金の種類についてご紹介します。融資を受けるときに最適な方法を知るために必要なことなので把握しておきましょう。
運転資金はどのような資金?
運転資金は、企業が事業を運営するために必要となる資金のことです。従業員の人件費や材料を仕入れる資金が該当します。また、運転資金が不足してしまうと事業の継続が困難となるため、企業を運営する上で不可欠な資金となります。
・固定費と変動費が存在する
運転資金は変動費と固定費に分けることが可能です。変動費は売上高が上がれば増加し、下がれば減少するなど売上と連動して日々変動する費用です。商品を作るための材料費や商品の仕入費、消耗品費などは変動費に該当します。
変動費の割合が大きくなるほど、売上に対する利益は少なくなる点がデメリットといえるものの、売上が下がると全体的なコストが減少するため、事業が安定しやすい点は把握しておきましょう。
固定費は売上と連動しない費用です。従業員の賃金や事務所の家賃、広告宣伝費などが該当します。ただし、固定費の中でも、人件費や光熱水費などは月ごとに変動するため、営業状況によって大きく変動する場合もあることに注意が必要です。
固定費の割合が大きいほど、十分な売上が確保できなければ事業が厳しい状態になります。また、原則として、開業当初は売上見込みが立てにくいため、固定費を抑えることが大切です。
運転資金の種類は大きく分けて5つ
運転資金は、商品の仕入れや諸経費の支払いなどに必要なお金です。不動産にかかる費用や施設にある設備などの設備資金以外という位置付けであり、事業を続けていく上で継続的に必要な資金となります。そんな運転資金には、大きく分けて5つあります。
・経常運転資金
会社を経営することにおいて最も割合を占める運転資金です。別名で正味営業運転資金とも呼ばれています。業務を行なっている日々の経費だけでなく人件費や地代家賃(土地や建物などにかかる賃借料)なども含まれています。
・増加運転資金
事業が上手く回り、順調に売上が伸びることで発生する運転資金です。事業の売上が伸びると人件費や光熱費などの資金がさらに必要です。売上金が入るまで必要な資金を立て替える必要がありますが、立て替える資金がない場合は売上金を回収するまでのつなぎ資金として増加運転資金を捻出する必要があります。在庫の水準を上げるためや、新しい取引先と契約するために必要な資金としても扱われています。そのため、売上金回収の前に倒産にならないように増加運転資金分の融資を受けることがあります。
・減少運転資金
事業の売上が減少したことで「売上規模の縮小による諸経費」や「売上がよかった頃の仕入れ代金」、「従業員にかかる人件費」などが支払えないときに発生する、増加運転資金と真逆の意味を持つ運転資金です。減少運転資金が発生したときは、「売上を伸ばす」または「経費削減」を行う必要があります。また、資金不足を解消する期間中は発生した減少運転資金分の融資を受ける必要も生じてきます。
・季節運転資金
従業員に支払うボーナスなど、特定の季節に必要となる運転資金です。また、特定の季節に取り扱っている商品の売上が伸びたときに必要な仕入れ資金も、季節運転資金と呼ぶことがあります。季節運転資金の融資は、1年以内の短期間の返済が条件で融資を受けることが一般的です。
・設備未払金決済運転資金
半年以上前に購入した設備にかかった資金が未払いのときに発生する運転資金です。何らかの理由により設備購入資金が足りなかった場合、半年経過していると設備未払金決済運転資金と呼ばれ融資を受けにくくなります。
半年以内の設備資金決済であれば、貸付金利や返却期間などが優遇されることがあります。設備購入資金が不足したら、設備未払金決済運転式扱いになる前に融資の相談を行ったほうがいいでしょう。
どの種類に該当するのか把握しよう
運転資金として融資を受ける際は、どの種類に該当するのか把握しておかないといけません。運転資金が必要になった理由は、審査において重要です。また、運転資金の融資が必要な理由を解消できる見込みがないと判断された場合、融資を受けることができない可能性もあります。
そのため、どの運転資金が不足しているのか明確にし、解決策があることを伝えることが大事です。自社の問題点や対策の他に具体的な数字を伝えることも、融資の審査において必要なので事前にまとめておきましょう。
運転資金の調達方法と注意点
運転資金が不足し資金繰りが悪化した場合、業績が黒字であっても倒産する危険性があります。そのため、資金不足が見込まれる場合には、次の方法を検討しましょう。
・日本政策金融公庫
政府が100%出資している金融機関であるというだけでなく、小規模の事業者から中小企業まで対応している点が特徴です。金利は低めに設定されており、滞納せず完済すると返済の実績として通常よりも高く評価されます。注意点としては、借入を行う際は、決算書の内容だけでなく、資金の用途を説明した上で、返済能力があることを示す必要があります。
・銀行融資
銀行から融資を受ける際には、融資の申し込みに至った経緯や理由を詳細に説明しなくてはなりません。例えば、運転資金を借入したいという理由では不十分であるため、具体的に何故資金が必要になるのかを明確に説明しましょう。
・ビジネスローン
緊急で融資を受けたい場合は、ビジネスローンの活用を検討しましょう。ビジネスローンの審査では、一般的にスコアリングシステムが採用されています。そのため、申し込みから融資が実行されるまでの期間が短いといった特徴があります。手軽に利用できる反面、通常の借入よりも金利が高くなります。
この他には、自治体などの制度融資の利用、親族や知人などと個人的に契約して借り入れる方法などがあります。
・借入時の注意点
金融機関における融資審査では、決算書の内容がポイントになります。そのため、毎月の試算表を税理士に作成してもらうなど、金融機関から提出を求められた際には、いつでも提出できるような準備が必要です。
まとめ
運転資金は事業を運営していく上で欠かせない資金です。主に5つの種類がある点を踏まえ、融資を受ける場合は、どの種類の運転資金が必要になるのかを把握しつつ、資金を調達しましょう。また、資金の調達方法ごとに特徴が異なっているため、どの方法が自社に適しているかを考慮することも大切です。
運転資金が不足した場合には事業の継続や拡大が困難になるため、自社の状況を確認した上で、どの程度の運転資金が必要なのかを検討しておきましょう。