第2抵当権とは?不動産担保で複数借入をする際の注意点
不動産担保ローンを借り入れる際には不動産に抵当権を設定しますが、債権者の順番によって、抵当権の順位が決まります。今回は、不動産を担保に複数の金融機関から借り入れる際の、抵当権の順位についてご紹介します。
不動産担保ローンの抵当権とは?
不動産担保ローンにおける抵当権は、金融機関が債務者(ローンを利用する人)の所有している不動産に対して設定するものです。
債務者がローンの返済ができない場合に、担保とした不動産が競売にかけられた際、抵当権者である金融機関は他の債権者より優先して、その売却代金から弁済を受けられます。
抵当権付きの不動産は、ローンの返済ができなくなった際に金融機関によって競売にかけられ、売却代金を返済に充当されます。返済ができない場合に行使される権利であるため、滞りなく返済を行っていれば実行されません。
設定する場合には、不動産に対して抵当権設定の登記を行います。抵当権を設定する際の流れは次の通りです。
1.ローン契約を結ぶ
不動産担保ローンの契約を借り主と金融機関との間で締結します。抵当権はあくまでも、債権(お金を返済してもらう権利)を補強するものであるため、債権者・債務者の間で、お金の貸し借りに関する契約を結ぶことが前提です。
2.抵当権設定契約を結ぶ
不動産担保ローン契約に基づいて、抵当権設定契約を結びます。
3.必要書類の準備
抵当権の設定登記を行うには、金融機関側と借り主側で準備する書類が異なります。必要書類を確認し、抜けがないようにしましょう。
4.登記申請を行う
原則として、登記申請は不動産の所在地を管轄する法務局で行います。窓口申請・郵送による申請が可能です。
5.登記事項証明書の取得後、金融機関に提出する
登記申請後、手続きが完了するまでには1~2週間程度時間がかかります。手続きが完了したら法務局で登記事項証明書を取得し、金融機関に提出しましょう。
手続きは、一般的に司法書士に委任して行うものです。特に法律で定められた資格は必要でないため、抵当権設定登記の手続きを自分で行うことも可能です。
しかし、登記申請手続きは専門的な知識が求められるだけでなく、手続きが煩雑です。自分で手続きをした場合、登記完了までに相当の時間と労力を費やすことになります。金融機関が不動産の所有者本人の手続きを認めないケースも少なくありません。
また、融資で資金を貸し付けている状態で抵当権設定登記が上手くいかない場合、貸し手から見れば無担保融資となります。このようなケースでは、何らかの損害が生じた場合、損害賠償請求が求められることになると想定されます。
こうした手間やリスクを回避するためにも、自分では手続きをせず司法書士へ依頼してください。司法書士への報酬を抑えたい場合には、複数の司法書士事務所から見積もりを取って比較しましょう。
第2抵当権の仕組み
抵当権は、ひとつの不動産に対して複数の設定が可能です。ひとつの不動産で2つの抵当権が設定されている場合、先に設定されたものが第1抵当権、次に設定されたものが第2抵当権となります。
融資額が大きくなる事業資金に関しては、不動産に複数の抵当権がつくことも珍しくはありません。担保とする不動産の価値が高く、いくつもの金融機関から借入を行っていても、返済計画を明確にしている場合は融資を受けられます。
資金調達が上手くいかない場合や追加で資金が必要になった際は、第2抵当の担保融資を金融機関に相談しましょう。
抵当権の順位とは
不動産を担保にしてお金を借りる場合、債権者としては、もしも返済不能になったときのために不動産から貸付金を回収できるようにしておきたいものです。このときに重要なのが、抵当権の順位です。
◇抵当権の順位
一般的に、ひとつの不動産に対して複数の債権者がいる場合、先に抵当権を設定した人から1位、2位と順位がついていきます。そして、順位が高い債権者ほどしっかりと回収ができることになります。
例えば、1,000万の担保価値のある不動産に対し、第1抵当権が800万、第2抵当権が500万設定されていたとします。抵当権が実行されて1,000万円の現金になったとき、第1抵当権者には800万円が渡りますが、第2抵当権者には200万円しか渡りません。結果的に、第2抵当権者は債権を回収し損ねることになりかねないのです。
・抵当権は弁済の優先順位を示すもの
抵当権は、不動産投資などで金融機関から融資などを受けた際に、債務者が返済できない場合に建物や土地を担保とする権利です。抵当権を設定した不動産に関しては、返済のために競売にかけられた場合、抵当権者は順位の高い方から優先して弁済を受けられます。
例えば、金融機関の住宅ローンを使って住宅を購入した場合、その金融機関が第1抵当権となります。このローンの完済前に、不動産担保ローンなどを利用して抵当権が追加される場合は、2番以降の抵当権が設定されることは把握しておきましょう。
第2抵当権は債権を回収できない可能性があるため、1抵当権以外の設定を避ける金融機関は多いといえます。
第2抵当権で審査が下りる?
◇銀行では難しい
このような理由から、第2抵当権以下の抵当権になることを嫌がる債権者は多いものです。特に銀行などでは、貸付の条件として第1抵当権が設定できることとしているところがほとんどです。
しかし、第2抵当権でもローンの審査が通る金融機関もあります。主にノンバンクの金融機関ではその傾向が強いため、第2抵当権で融資を探すならノンバンクを中心に探すのが効率的といえます。
ただし条件として、第1抵当の借入残高を差し引いても、担保価値がまだ残っている場合にかぎります。また不動産の担保価値は第三者に目に見える形ではありませんので、査定を行う会社により、担保価値が変動します。
そのため、担保価値が残っているかは自身では判断できないため、一度金融会社に相談することが望ましいです。
◇第2抵当権でも審査が通る仕組み
抵当権の順位が低いと、債権を回収できないリスクが高まります。そのため、第2抵当権以下の場合は、自分よりも上の順位の抵当権がいくらついているのか、もし抵当権が実行されたときのための損害額はいくらなのか、ということをベースに融資額を計算することになります。第2抵当権を設定したいと思ったら、まずは第1抵当権がいくらついているのか、不動産との差額はいくらなのかを大まかに計算しておくことで、融資可能な金額がある程度把握できるでしょう。
◇返済比率とのバランスも無視できない
抵当権の順位とは直接関係はないものの、第2抵当権を設定する際には、自身の返済比率とのバランスも審査に影響してきます。返済比率とは、年収に対して借入金などの返済額がどれくらいあるのかということです。一般的に、返済比率は25%〜30%、高くても35%とされていますので、第1抵当権との関係で融資が下りそうであっても、返済比率で引っかかってしまって融資が下りないというケースもあります。
第2抵当権を設定する際のデメリット
第2抵当権を設定することができれば、多くの融資を受けることができます。一方で、第2抵当権を設定することのデメリットも知っておくことが大切です。
見てきたとおり、後順位の抵当権では債権回収のリスクが高まります。そのため、リスク回避として貸付金の金利を高く設定している金融機関が多くなっています。第1抵当権との金利の差が出てしまうのはデメリットといえるでしょう。
また、抵当権を複数設定し、不動産担保ローンを組むということは、それだけ返済額が増えるということでもあります。当たり前のことではありますが、返済額が増えることで家計を圧迫するというデメリットはしっかりとおさえておく必要があるでしょう。
不動産担保ローンを組む際、抵当権は複数つけることが可能です。ただ、順位が後になるほど債権者としては回収のリスクが高まるため、第2抵当権を嫌がる債権者も少なくありません。第2抵当権以下でもよしとしている金融機関では、一般的に見て金利が高めになる傾向もありますので、デメリットを把握した上で第2抵当権を検討するとよいでしょう。
抵当権は抹消によって順位が変わる
ここからは、抵当権の順位変更について詳しく見ていきます。
・抹消の条件と任意売却
抵当権の抹消ができるケースは以下のケースです。
1.住宅ローンを完済したケース
住宅ローンを完済できれば、抵当権を抹消できます。住宅ローンの完済によって、金融機関は債権者から外れるため、抵当権が消滅します。しかし、登記簿謄本への記載には抹消の登記が必要です。
完済による抵当権の抹消についてはいつでも行えるものの、早めに手続きを行いましょう。手続きを行っていない場合、債権者が登記簿謄本を確認した際に抵当権がそのまま残っているため、新しいローンが組みにくくなります。
実際に、完済して抵当権が消滅していても登記簿謄本に残っていた場合には、融資の取り止めや融資額の減額につながることもあるため、注意が必要です。
2.不動産を任意売却する場合
任意売却はローン返済の滞納によって行われます。期間としては3カ月~6カ月程度が一般的です。また、連帯保証人や債権者の合意を得ていること、税金の滞納などにより差し押さえを受けていないことも条件となります。
任意売却の場合は、売却価格だけでは残債に不足した場合であっても、抵当権を抹消することが可能です。この際に売却価格を決めるのは金融機関となります。そのため、契約や引き渡しに関しては金融機関との連携が必要です。
ローン返済が困難である場合はできるだけ返済する方法を模索しつつ、競売よりも売却価格が高くなりやすい任意売却を検討しましょう。
抵当権の順位を変更することは可能?
抵当権の順位変更は結論から言うと、理論上は可能となります。
なぜ理論上といったかというと、順位変更にあたり、すべての債権者の承諾が必要となるためです。
それなりの理由がないと、債権者の承諾が得られませんので現実的には厳しいことが多いです。
まとめ
不動産担保ローンなどから複数の借り入れを行うことで第2抵当権が発生します。債権を確実に回収できる第1抵当権とは異なり、第2抵当権は、債権の回収リスクが高まるため金融機関からの融資が受けにくいといえます。
加えて、審査に通過できる金融機関はあるものの、金利も第1抵当権より高くなる点には注意が必要です。ただし、融資を受けられれば、資金の調達が可能であるため、状況次第では第2抵当権での借り入れも検討しましょう。