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登記に強くなれる!抵当権と抵当権設定者はどう違う?

住宅ローンを検討する場合や不動産の購入において、抵当権というワードを聞いたことのあるケースは多いと想定されます。しかし、抵当権と抵当権設定者の違いを把握していない方もいるのではないでしょうか。

今回は、抵当権と抵当権設定者との違いを解説しつつ、抵当権に関わる手続きについて解説します。

抵当権と抵当権設定者について詳しくなろう

ここでは、抵当権と抵当権設定者について解説していきます。とくに、抵当権設定者は債務者、抵当権者は抵当権を設定している金融機関や会社を意味する点は知っておきましょう。

そもそも抵当権とは どんなもの?

抵当権は、債務者の返済が滞る事態に備えて、不動産を担保に他の債権者より優先して弁済を受けられる権利です。抵当権付きの物件は借金が返済できなくなれば、ローンを組んだ金融機関により売却され、その売却代金が返済に強制的に充てられます。

抵当権設定者は抵当権者とどう違う?

抵当権設定者はローンの借入を行う債務者を意味する言葉です。自分が所有している不動産を担保とする立場といえます。一方、抵当権者は土地や不動産に対して抵当権を設定する立場であるため、金融機関や貸金業者、保証会社などが抵当権者となります。

夫婦連帯債務の場合の抵当権設定者は?

夫婦連帯債務としてローンを契約した場合でも、抵当権設定者は「所有している不動産に抵当権を設定する債務者」です。仮に、夫婦連帯債務で土地や建物を夫の名義とした場合、抵当権設定者は夫になります。

抵当権設定者が亡くなったときはどうなる?

ここでは、抵当権設定者が亡くなってしまった場合の対処方法についてみていきましょう。

抵当権抹消と名義変更登記

抵当権設定者が亡くなってしまった場合は、抵当権抹消手続きと名義変更登記の手続きを進める必要があります。また、抵当権消滅前に亡くなった場合と消滅後に亡くなった場合では、手続き内容に違いがある点は知っておきましょう。

抵当権消滅前に亡くなった場合

抵当権消滅前に亡くなった場合の手続きをみていきます

抵当権抹消の手続き

まずは、次の書類を用意しましょう。

  • 登記申請書(法務局や法務局ホームページからダウンロードで入手可能)
  • 登記済証または登記識別情報
  • 抵当権抹消の委任状
  • 登記原因証明情報または弁済証書
  • 銀行の資格証明書

次に、管轄している法務局に登記申請書を提出しましょう。記載方法が分からない場合は、法務局のホームページから登記申請書の記載例をダウンロードし、参考にして記入を進めることを推奨します。申請してから審査が通るまでには、1~10日程度の時間が必要です。申請方法は次の通りです。

  • 窓口に持っていく
  • 郵送
  • オンライン申請(マイナンバーカード保有の場合)

オンライン申請はマイナンバーカードを持っている場合のみであるため、事前に準備しておきましょう。

名義変更登記の手続き

名義変更登記を行う場合には、次の書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報
  • 不動産所有者および抵当権者の委任状
  • 登記済権利証または登記識別情報

※この他の書類が必要になるケースもあります。

遺産分割協議や法定相続分で土地を相続する際は、亡くなった方が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本、相続人の現在の戸籍謄本が必要となります。必要書類を収集した後で、亡くなった方が遺言書を準備していない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行う流れとなります。

相続人全員が合意した後は、決定内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員で署名と押印を行いましょう。また、登記には、登録免許税の計算が必要です。相続登記をする際は「相続不動産の固定資産税評価額×0.4%」の登録免許税がかかります。登録免許税は登記申請書に収入印紙を貼り付けて納付します。

不動産の固定資産税評価額に関しては、課税明細書や固定資産評価証明書で確認が可能です。そして、必要書類の準備、登録免許税の計算が完了した後に登記申請書を記入し、不動産の住所地を管轄する法務局に提出しましょう。

提出方法は、窓口もしくは郵送での提出を選択できます。郵送で提出する場合には、書留もしくは赤色レターパックで送付しましょう。

抵当権消滅後に亡くなった場合

ローンを完済し、抵当権抹消手続き前に抵当権設定者が亡くなった場合は、このケースに該当します。名義変更登記ができている場合とできていない場合で違いがあるため、みていきましょう。

・名義変更登記ができている場合

不動産の所有者として登記された相続人によって、抵当権抹消の登記が可能です。

・名義変更ができていない場合

ローンが完済されている状態であるため、慌てて名義変更登記を行う必要はありません。相続人の1人が登記権利者となれることから、戸籍謄本などの必要書類を揃えた場合に抹消手続きを行えます。

抵当権設定者は完済後の抵当権抹消の手続きまで済ませる必要がある

ここでは、ローン完済後に抵当権抹消の手続きが必要な理由をみていきましょう。

抵当権抹消の手続きをしないとどうなるの?

抵当権を抹消しなかった場合は、担保にする不動産や土地に抵当権が設定されている状態となります。そのため、新たにローンを組もうとした場合に、ローンの審査に通りにくくなるといえるでしょう。

抵当権抹消の手続きは自分でもできる?

抵当権抹消を自分で行うメリットは、費用を抑えられる点が挙げられます。司法書士などの専門家に依頼すると手数料が必要であるものの、自分で行った場合は費用を節約できます。また、複数の不動産を所有している場合には、一度自分で手続きを行うと今後の抹消手続きがやりやすくなるでしょう。

デメリットは、時間や労力がかかる点です。書類忘れや手続きに不備がある場合は、何度も法務局に出向く必要があります。万が一のトラブルに対応するためにも、専門家にお任せすることを推奨します。

抵当権抹消のとき頼りになる専門家は?

抵当権抹消は、司法書士や弁護士に依頼しましょう。費用が大きく変わらない場合は、具体的なサポート内容を比較し、自分のニーズに合致している専門家を選ぶことが大切です。

抵当権設定にかかる費用と流れ

ここでは、抵当権設定にかかる費用と流れをみていきましょう。

抵当権設定にかかる費用は?

抵当権設定にかかる費用は、登録免許税や証明書発行の費用、専門家への報酬があります。抵当権設定登記の登録免許税は、住宅ローンの借入額×0.4%です。例えば、住宅ローンの借入が1,000万円の場合であれば、登録免許税額は1,000万円×0.4%=4万円となります。

証明書発行の費用には、次の手数料が必要です。

  • 印鑑証明書の取得手数料1通450円
  • 抵当権設定の手続き完了後、登記事項証明書1通600円

加えて、専門家への報酬には、司法書士に依頼すると5~10万円程度かかることを想定しておきましょう。

抵当権設定登記の流れ

抵当権設定登記の流れは次の通りです。

  1. 金銭消費貸借契約を締結:抵当権設定登記の前に金融機関と金銭消費貸借契約を締結する
  2. 抵当権設定契約の締結:金融機関と抵当権設定契約を締結する
  3. 必要書類の準備:手続きを進めるために必要書類を用意する。専門家に依頼する場合には、専門家へ渡す
  4. 登記申請を行う:融資実行日に、依頼している場合であれば、専門家が法務局で登記申請。手続きにかかる期間は1~2週間程度
  5. 登記事項証明を金融機関へ提出:登記の手続き完了後、法務局で登記事項証明書を取得して金融機関に提出。依頼している場合には、証明書の取得から金融機関への提出まで対応してもらえる

抵当権設定に必要な書類は?

「法定相続情報証明制度」についてみていきましょう。

「法定相続情報証明制度」とは?

「法定相続情報証明制度」は相続が発生した際に用いられる制度です。相続人の特定が可能な戸籍謄本や法定相続情報一覧図を提出した場合は、登記官の認証文が付された一覧図の写しの交付を受けられます。

「法定相続情報証明制度」の申請方法

法務局への申請は次のような流れで行います。

1.必要書類を集める

次の必要書類を用意しましょう。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍等
  • 申出書
  • 運転免許証などの申出人の住所・氏名を確認できる公的書類
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の戸籍等
  • 法定相続情報一覧図

2.法定相続情報一覧図の作成一覧図は家系図のような表となっており、記載しなければならない事項が定められています。記入が難しい場合には、法務局のサイトで法定相続情報一覧図の様式のダウンロード、記載例を確認しながら作成しましょう。

参考:法務局:https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html

3.申出書に必要事項を記入し、法務局に申出を行う

申出する法務局は、被相続人の死亡時本籍地・申出人の住所地・被相続人の最後の住所地・被相続人名義の不動産の所在地から選択可能です。申出は郵送でも可能です。

4.法定相続情報一覧図の写し交付

登記官の確認後、認証文が付された法定相続情報一覧図の写しの交付を受けられます。手続きが難しければ、司法書士など専門家への依頼も検討しましょう。

まとめ

抵当権は不動産を担保にして、他の債務者より優先して弁済を受けられる権利です。抵当権者は土地や不動産に対して抵当権を設定する立場、抵当権設定者は債務者であり、自分が所有している不動産を担保とする立場だといえます。

抵当権者と抵当権設定者の立場の違いや解説してきた各種手続きについて知ることで、登記についての理解も深められます。実際に手続きが必要になった際に難しいと感じる場合は司法書士などの専門家への依頼を検討しましょう。

土地や建物を担保とする不動産担保ローンについて知りたい方は次の記事もご覧ください。